「押し出しが強い」と「引き出しが多い」

 歩いているとくだらないことが頭に浮かぶ。
 最近、歩行中に考えたことは、

 「押し出しが強い」という言い回しと、「引き出しが多い」という言い回しは、並べてみると、何となく対照的な文句のような気がしてきて、面白い

 ということである。
 この発見を活かして、たとえば、

 「やっぱり、お笑いとかでもさ、押し出しの強さと引き出しの多さがないと、生き残れないよね」

 というような評言を口から出せば「気の利いた発言」と人に思われるかもしれぬ、などと考える。そして、そのような発言を、ちょび髭をはやし、おしゃれげな眼鏡をかけた、小太りの男Aが、酒場で得意げに話している情景を妄想し、思わず、怒りと恥ずかしさがこみあげ、自然早足になるのであった。
 男Aの姿は、よく考えると、昔、働いていた職場で、よくみかけたが、交流は一切なかった人だ。傘とかマグカップやなんかでも、いちいち、おしゃれげなものを使っていたおっさんだった。

 元気かなあ、あの人。