日本橋のジョニー(二代目)

 さまよえる勤務者として、最近の私は、日本橋に勤務している。
 勤務先で、昼飯時(一人で)弁当を買いに行くと、橋の上(かつ高速道路の下)に、男が居る。彼は、台車に何かいろいろなものを搭載して上からビニールシートをかぶせ紐でぐるぐる縛り上げたオブジェの傍らに、衣服も皮膚も黒茶けた姿で、いつも居る。
 かつて横浜(JR横浜駅近辺)で勤務していた時(※)にも、似たような男が居た。彼もまた衣服も皮膚も同じ様に黒茶けてはいたが、横浜の男の方は、「衣服」と呼ぶには、あまりにもボロボロすぎ、まるですだれのようであったことを思い出す。シャイな彼は、人ごみのなかを歩く時には、股間を両手で覆い、前かがみで足早に過ぎ去っていくのを常としていた。大雨の日に、やはり、両手股間足早スタイルではあったが、いつものすまなそうな表情ではなく、満面に笑みを浮かべて、びしょぬれで歩いていた彼を、私は勝手に「ジョニー」と呼んでいた。

 台風の日をさかいに姿を消したジョニー。

 でもすぐ夏の暑い日に街路脇の植え込みのなかからあらわれた(あきらかにさっきまで寝ていた感じの)ジョニー。

 さて、日本橋の男の方は、さすが日本橋というべきか、手製の棒とボールで「ゴルフ」をしていたりする。あるいは時刻表(か電話帳)をせっかちにめくったり、チラシの裏に向かって何か書いて(いるふうに手をかまえているが何も書かずにでも肩を小刻みに動かして)いたりする。

 特に名前を思いつかないので、ジョニー(二代目)とでも呼ぶことにする。

 「えどばし」と書かれた橋の上の話。


(※)横浜に勤務していたのは1997年3月から2005年2月まで。