心を入れ替えるつもりが
実生活において「心を入れ替える」という文句を使ったことが果たしてあっただろうか。省みるにあまりそういう芝居がかったセリフを口にする人生ではなかったような気がする。
人生はともかくとして、「心を入れ替える」という言い回しには、やはり空々しい響きがあると思う。「心を入れ替える」ということが、具体的に何をどうするのか、明確でないからでもあるだろう。
では「心を入れ替える」と言うかわりに「歯を入れ替える」と言ってみてはどうだろうか。
「社長」
「何だ、君は・・・」
「吉田です」
「いや、君、どこから入ってきた?」
「社長、わたくし」
「キミ困るよ」
「これからは、歯を入れ替えて働こうと思いまして」
「いいかね、吉田君、・・・歯?」
背広のポケットからペンチを取り出す男。
「ワタクシ、歯を」
「やめなさい、キミ、やめろ、だれかー! だれかー!」
社長絶叫。