車窓から垣間見る

 朝、電車に揺られながら、会社に行く。
 このような人生の時が営業日毎に訪れようとは、『かりあげ君』や『人間交差点』を立ち読みしていた小学生の頃には、想像もつかなかったことである。
 さて、そんな通勤電車の窓の向こうに、様々なものが、一瞬、ちらりと見えては消えていくのだが、なかには、一ヶ月たっても覚えているものもある。
 たとえば・・・
 橋の下に、川が広がり、その川に寄りそうように公園と運動場がある。運動場のフェンスと川との間、川のへり、土手、ただ草が生え、ただ川に向かって傾斜しているだけのところに、上半身裸の男、水道(よく公園のトイレの前とかに設置してあるようなやつ)の蛇口をひねっている。
 なぜあの、坊主頭でやや太っていた、男は、あんなところで上半身裸になっていたのだろう。
 なぜあんなところに、水道を設置してあるのだろう。