完全な「水木しげる」の映像化は可能か

ハードディスクなんとかの力を借りて最近は以前に比べてテレビを観るようになったが、昨晩(8月12日)放映された、
NHKスペシャル「鬼太郎が見た玉砕〜水木しげるの戦争〜」
も、このハーなんとかが無ければみなかったかもしれない。
しかも、みたいといって録画したのは家人であったという受動的な鑑賞。

というのも「水木しげる」の実像を描こうという意図をマス相手のテレビドラマが持つはずがないと思っていたからだ。しかしそれは裏切られた。

このNHKスペシャルはテレビドラマで、しかもメタフィクションなつくりになっている。
水木しげる香川照之が熱演)を主人公とし、この、執念と脱力の巨人・空前絶後の元祖特殊マンガ家が、商業的に成功し生活も安定した環境の中で、なぜ水木戦記マンガの集大成というべき「総員玉砕せよ!」を描いたのか、がテーマになっている。
呉智英氏が『犬儒派だもの』(第二章 二、水木しげるの最高傑作としての「水木しげる」)で紹介したエピソードをドラマの非常に重要な箇所(戦没者と生存者との対話)で用いるなど、「戦争を描く」という点でも「水木しげるを描く」という点でもかなり力が入っているように思った。
とはいっても、戦場の描写がそんなに汚れてはいないように見えたりするが、テレビドラマとはそういうものと思ってみていたというそんなことよりも私が言いたいのは、香川照之という人の演技が「水木しげるを物真似する」ことの上に展開されていて、こういう「物真似の上に展開される演技」は、面白い、ということである。
森繁久弥吉田茂を演じた例(『小説吉田学校』だったか)とか、イッセー尾形昭和天皇を演じた例とか(『太陽』。まだみてない)、竹中直人殿山泰司を演じた例(えーと、シンドウカネト監督の、タイトルを忘れた)とかを思い出し、そういう殿堂というか列伝というか、その中に水木しげるが取り上げられたということはこれは、いいなあ、と思った。

これを映画にするなら、・・・貧乏時代も含めて「水木しげる」を描く。「水木しげる」がマンガを描いている世界は実写で。そして、「水木しげる」が描く、マンガ『総員玉砕せよ!』の世界は、完全「水木しげるマンガ的」なアニメーション、というふうにして欲しい。で、アニメーション部分は、高畑勲

無理か。